「きらら方式」の前にある壁
山口県宇部市のコミュニティFM「FMきらら」は2002年7月14日の開局以降18年間黒字経営を続けているそうです。そのためのノウハウは「きらら方式」と呼ばれているようです。
「きらら方式」の存在はコミュニティFM紹介ブログ「コミュニティFM大図鑑」で知りました。
・合同会社コミュニティメディア開発推進機構
http://www.cmkikou.jp/
会社案内を見たら「きらら方式」を生み出したエフエムきらら代表取締役の井上悟さんが代表のようです。業務内容には開局支援の他に「既存コミュニティ放送局リストラクチャリング」とあります。所謂「リストラ」の支援ですが、人員削減というよりも黒字化できるように経営の見直しを手伝ってくれるのでしょう。リストラクチャリング料金を支払うのが嫌ならば、井上悟さんは体験談を本にしているようですから、それを読んで理解して真似したら黒字化できるかもしれません。
さて、コミュニティメディア開発推進機構のホームページに「開局STEP<例>」がありましたので、「きらら方式」の詳細を知れるかもしれないと思って見てみました。残念ながら「きらら方式」についてではなさそうですが、コミュニティFMを「きらら方式」で運営する以前に、開局するには厳しい条件があることが分かりました。載っている条件を満たさなくても開局することはできるでしょうが、おそらく「きらら方式」で運営するには「開局STEP<例>」に載っている厳しい条件を満たして開局することが必要なのでしょう。
私が厳しいと思った所をピックアップしていきます。
まずは「開局メンバー(4人から6人くらい)を集める。」です。
これは当たり前で、一人で頑張ってもうまく行かないでしょう。でも、「コミュニティFMを作ろう」と思ってくれる人を4人も集められるでしょうか。「赤字になるだけだからやめとけ」と言われそうです。そもそも4人でさえ集められないようであれば、ニーズが無いということで黒字経営は無理でしょう。集まった人たちの能力も重要だとは思いますが、とりあえずは集められなければダメでしょう。続けて「開局地区のマーケティングを行う。(どの程度の売り上げが見込めるのか?どの程度の設備にするのか?継続運営が可能か?などを調べる。)」と書いてありますが当たり前です。それをやらずに開局するようなら無謀です。開局メンバーにマーケティングの能力も必要です。
そして、「開局メンバー、ひとり100万円以上出資し、株式会社を設立する。」です。これはとても高い壁です。
せっかく開局メンバーを集めても100万円も出費したくないからと離れていきそうです。開局メンバーは金持ちじゃなければダメなようです。「最低100万円」については次のように書いてあります。
開局メンバー以外の株主が例えば1000万円も出費してくれたら、開局メンバーの一人も1000万円の出費が必要なようです。開局の言いだしっぺなら仕方ないでしょう。その後のステップで「増資の目標額を決め、株主募集説明会の開催、個別案内などで、株主を募集。」と書いてありますが、開局メンバーが6人集まって一人100万円ずつ出費して株式会社を設立したら資本金は600万円に過ぎません。FMきららの資本金は4000万円ですが、そこまで集めるのは無理だとしても、最低でも1000万円にしたければ、残りの400万円は開局メンバー以外の株主を集めなければいけません。人数が多ければ一人当たりの出費を抑えることができるでしょうが、人数が少なければ、多額の出費をしてくれる株主が必要です。そのどの株主よりも開局メンバーの一人は多く出費しなければいけないようです。相当な金持ちでなければ難しいでしょう。
既に書きましたが、「増資の目標額を決め、株主募集説明会の開催、個別案内などで、株主を募集。」も高い壁です。
コミュニティFMの株主になるメリットは何でしょう。メリットがなければ株主になってくれないでしょう。黒字経営が期待できないことは多くの人が知っていますから、配当金なんか期待できないでしょう。開局のための負債や赤字経営で純資産が減ってしまったら倒産、廃業、解散した時に出資したお金は戻ってきません。株主になるということは、お金を寄付するようなものです。どの程度の株主が集まるでしょう。どの程度のお金が集まるでしょう。ちなみに、前に書きましたが、エフエム上越の資本金は5000万円ですが利益剰余金がマイナス3000万円余りになって純資産は2000万円もありません。倒産、廃業、解散したら出資額の4割しか戻ってこないということでしょう。
・コミュニティFMの経営の詳細を知りたい (2020/12/14)
https://hitorinezumi.blogspot.com/2021/12/2020-12-14.html
・出資法人等経営状況報告書(エフエム上越)(PDF、1.2MB)
https://www.joetsutj.com/storage/4,cc8f987d9201
開局するコミュニティFMを聴ける市民に株主になってもらいたいのかもしれませんが、「きらら方式」では入会無料、年会費無料の会員を募集するようですから、その会員が株主というわけではなさそうです。株主にとってのメリットは何だろうかと改めて考えてしまいます。そして株主を集めるのは難しいだろうと想像してしまいます。
ところで「開局STEP<例>」の終わりの方に「スタッフ募集」と書いてあります。これはボランティアではない有給の従業員のことだと思いますが、私は開局メンバーが従業員になるのだと思っていました。開局メンバーが6人ならば、皆が従業員になればコミュニティFMを運営できそうな気がします。上記資料によるとエフエム上越の従業員は6人です。それ以上の従業員に給料を支払う余裕はないということでしょう。
FMきららのホームページを見てみました。パーソナリティが14人います。スタッフとは彼らのことかもしれません。6人では足りないようです。彼らの賃金は幾らで人件費の総額は幾らなのでしょう。気になりました。
・パーソナリティ|FMきらら(山口県宇部市)
https://www.kirara804.com/personality.php
パーソナリティの中に開局メンバーだと思われる代表の井上悟さんはいらっしゃいません。開局メンバーは開局後は役員になるのでしょうか。役員には役員の仕事があって、その仕事に見合った賃金を受け取っているのかもしれませんが、開局メンバーがパーソナリティにならないとしたら少し意外です。
ここまで書いてきて株主として100万円も出費する開局メンバーにとってのメリットというのは役員として報酬を受け取ることなのかもしれないと思いました。真相は分かりません。そうだとしても、増資のために集められた株主のメリットは分からないままです。
コミュニティFMはラジオをやりたい人たちが集まって自分たちで放送するというイメージがありましたが、少し違ったようです。開局メンバーは自分たちで放送するのではなくスタッフを募集して放送してもらい、自分たちは経営に専念するのかもしれません。そして、そのコミュニティFMを開局するには、まずは100万円以上も出費できる人が4人以上も必要で、自分たちよりも出資額の小さい株主を大量に集めなければいけないようです。高い壁があります。その高い壁を越えたら「きらら方式」でコミュニティFMを黒字経営できるのかもしれません。
2021-01-22 21:00
「きらら方式」の存在はコミュニティFM紹介ブログ「コミュニティFM大図鑑」で知りました。
低価格の広告料や、すべてを自社製作・生放送(後述)するなどの、井上氏のCI戦略に基づいた独特のビジネスモデル、いわゆる「きらら方式」で開局1年目から単年度黒字を計上して、以降毎年黒字経営を続けています。このノウハウを基に、他地域でのコミュニティFM開局支援も行っており、中国・四国・関東を中心に26局(2020年10月現在)の支援実績があるほか、数冊の著書も出版しています。
FMきららは開局当初から、先述のようにコミュニティFMの事業規模に合わせたビジネスモデルを展開していて、黒字計上を続けています。例を挙げると、低価格の広告料(20秒のスポットCMは税抜500円から)、外部の配信は受けずすべて自社製作してかつ生放送する、スタッフは地元から採用するが、ボランティアスタッフは採らない、個人や事業者向けの会員制度を設ける、などを実施しています。他のコミュニティFMで類似のことを行っている局は、概ねここの開局支援を受けています。「きらら方式」を検索したらWikipediaにも載っていました。
(FMきらら-山口県宇部市 : コミュニティFM大図鑑)
FMきららは開局以来黒字経営を続けていることで知られている。コミュニティFMに見合った低コストの運営モデルを発案・実践を行っているためである。
・24時間放送をせず深夜は放送休止(フィラー音楽も流さない)
・全番組が生放送
・他社からのネット番組も流さずすべて自主制作
・曲を流した直後にCMを必ず流す
・個人・法人の会員クラブを結成
・CM料金を格安に設定(格安なため結果出稿数が増す)
このビジネスモデルは自社グループだけで展開するのではなく、新規開局するコミュニティFMにもコンサルティングを行うため合同会社 コミュニティメディア開発推進機構を設立し、全国に広がっている。
きらら方式を採用する局コミュニティFMの経営はどこも厳しいらしく、黒字が可能ならば他局も真似した方が良いでしょう。真似しないのは真似するのが難しいからでしょうか。Wikipediaによると新規開局するのならば「合同会社 コミュニティメディア開発推進機構」がコンサルティングしてくれるようです。その「コミュニティメディア開発推進機構」にはホームページがありました。
山口県内の放送局
・ぷらざFM(防府市) ※MUSIC BIRDからの番組ネットや音楽フィラー番組で24時間体制を保っているため、実質は一部分のみの採用
・FMながと(長門市)
山口県外の放送局
・FMあおぞら(宮城県亘理町)
・FMくらら857(栃木県栃木市)
・おーラジ(栃木県小山市)
・FMクマガヤ(埼玉県熊谷市)
・ちちぶエフエム(埼玉県秩父市)
・FMひがしくるめ(東京都東久留米市)
・FMいずみおおつ(大阪府泉大津市)
・FM東広島(広島県東広島市)
・FM KITAQ(福岡県北九州市小倉北区)
・COMI×TEN(コミてん)(福岡県福岡市中央区)
・えびすFM(佐賀県佐賀市)
・FMおおむら(長崎県大村市)
・SOO Good FM(鹿児島県曽於市)
・あいらびゅーFM(鹿児島県姶良市)
(エフエムきらら - Wikipedia)
・合同会社コミュニティメディア開発推進機構
http://www.cmkikou.jp/
会社案内を見たら「きらら方式」を生み出したエフエムきらら代表取締役の井上悟さんが代表のようです。業務内容には開局支援の他に「既存コミュニティ放送局リストラクチャリング」とあります。所謂「リストラ」の支援ですが、人員削減というよりも黒字化できるように経営の見直しを手伝ってくれるのでしょう。リストラクチャリング料金を支払うのが嫌ならば、井上悟さんは体験談を本にしているようですから、それを読んで理解して真似したら黒字化できるかもしれません。
さて、コミュニティメディア開発推進機構のホームページに「開局STEP<例>」がありましたので、「きらら方式」の詳細を知れるかもしれないと思って見てみました。残念ながら「きらら方式」についてではなさそうですが、コミュニティFMを「きらら方式」で運営する以前に、開局するには厳しい条件があることが分かりました。載っている条件を満たさなくても開局することはできるでしょうが、おそらく「きらら方式」で運営するには「開局STEP<例>」に載っている厳しい条件を満たして開局することが必要なのでしょう。
私が厳しいと思った所をピックアップしていきます。
まずは「開局メンバー(4人から6人くらい)を集める。」です。
これは当たり前で、一人で頑張ってもうまく行かないでしょう。でも、「コミュニティFMを作ろう」と思ってくれる人を4人も集められるでしょうか。「赤字になるだけだからやめとけ」と言われそうです。そもそも4人でさえ集められないようであれば、ニーズが無いということで黒字経営は無理でしょう。集まった人たちの能力も重要だとは思いますが、とりあえずは集められなければダメでしょう。続けて「開局地区のマーケティングを行う。(どの程度の売り上げが見込めるのか?どの程度の設備にするのか?継続運営が可能か?などを調べる。)」と書いてありますが当たり前です。それをやらずに開局するようなら無謀です。開局メンバーにマーケティングの能力も必要です。
そして、「開局メンバー、ひとり100万円以上出資し、株式会社を設立する。」です。これはとても高い壁です。
せっかく開局メンバーを集めても100万円も出費したくないからと離れていきそうです。開局メンバーは金持ちじゃなければダメなようです。「最低100万円」については次のように書いてあります。
開局メンバー、ひとり100万円以上出資し、株式会社を設立する。
※ここが一つのハードル。いくらでもいいのでは?は、無し。ひとり最低100万円を出資する。
自分は出さないが株主を集めるでは信用されない。
募集する株主の最高出資額を100万円以上にするなら、メンバーのひとりは、それと同額の出資をする。
(開局STEP | 合同会社コミュニティメディア開発推進機構)
開局メンバー以外の株主が例えば1000万円も出費してくれたら、開局メンバーの一人も1000万円の出費が必要なようです。開局の言いだしっぺなら仕方ないでしょう。その後のステップで「増資の目標額を決め、株主募集説明会の開催、個別案内などで、株主を募集。」と書いてありますが、開局メンバーが6人集まって一人100万円ずつ出費して株式会社を設立したら資本金は600万円に過ぎません。FMきららの資本金は4000万円ですが、そこまで集めるのは無理だとしても、最低でも1000万円にしたければ、残りの400万円は開局メンバー以外の株主を集めなければいけません。人数が多ければ一人当たりの出費を抑えることができるでしょうが、人数が少なければ、多額の出費をしてくれる株主が必要です。そのどの株主よりも開局メンバーの一人は多く出費しなければいけないようです。相当な金持ちでなければ難しいでしょう。
既に書きましたが、「増資の目標額を決め、株主募集説明会の開催、個別案内などで、株主を募集。」も高い壁です。
コミュニティFMの株主になるメリットは何でしょう。メリットがなければ株主になってくれないでしょう。黒字経営が期待できないことは多くの人が知っていますから、配当金なんか期待できないでしょう。開局のための負債や赤字経営で純資産が減ってしまったら倒産、廃業、解散した時に出資したお金は戻ってきません。株主になるということは、お金を寄付するようなものです。どの程度の株主が集まるでしょう。どの程度のお金が集まるでしょう。ちなみに、前に書きましたが、エフエム上越の資本金は5000万円ですが利益剰余金がマイナス3000万円余りになって純資産は2000万円もありません。倒産、廃業、解散したら出資額の4割しか戻ってこないということでしょう。
・コミュニティFMの経営の詳細を知りたい (2020/12/14)
https://hitorinezumi.blogspot.com/2021/12/2020-12-14.html
・出資法人等経営状況報告書(エフエム上越)(PDF、1.2MB)
https://www.joetsutj.com/storage/4,cc8f987d9201
開局するコミュニティFMを聴ける市民に株主になってもらいたいのかもしれませんが、「きらら方式」では入会無料、年会費無料の会員を募集するようですから、その会員が株主というわけではなさそうです。株主にとってのメリットは何だろうかと改めて考えてしまいます。そして株主を集めるのは難しいだろうと想像してしまいます。
ところで「開局STEP<例>」の終わりの方に「スタッフ募集」と書いてあります。これはボランティアではない有給の従業員のことだと思いますが、私は開局メンバーが従業員になるのだと思っていました。開局メンバーが6人ならば、皆が従業員になればコミュニティFMを運営できそうな気がします。上記資料によるとエフエム上越の従業員は6人です。それ以上の従業員に給料を支払う余裕はないということでしょう。
FMきららのホームページを見てみました。パーソナリティが14人います。スタッフとは彼らのことかもしれません。6人では足りないようです。彼らの賃金は幾らで人件費の総額は幾らなのでしょう。気になりました。
・パーソナリティ|FMきらら(山口県宇部市)
https://www.kirara804.com/personality.php
パーソナリティの中に開局メンバーだと思われる代表の井上悟さんはいらっしゃいません。開局メンバーは開局後は役員になるのでしょうか。役員には役員の仕事があって、その仕事に見合った賃金を受け取っているのかもしれませんが、開局メンバーがパーソナリティにならないとしたら少し意外です。
ここまで書いてきて株主として100万円も出費する開局メンバーにとってのメリットというのは役員として報酬を受け取ることなのかもしれないと思いました。真相は分かりません。そうだとしても、増資のために集められた株主のメリットは分からないままです。
コミュニティFMはラジオをやりたい人たちが集まって自分たちで放送するというイメージがありましたが、少し違ったようです。開局メンバーは自分たちで放送するのではなくスタッフを募集して放送してもらい、自分たちは経営に専念するのかもしれません。そして、そのコミュニティFMを開局するには、まずは100万円以上も出費できる人が4人以上も必要で、自分たちよりも出資額の小さい株主を大量に集めなければいけないようです。高い壁があります。その高い壁を越えたら「きらら方式」でコミュニティFMを黒字経営できるのかもしれません。