コミュニティFMの経営の詳細を知りたい

 全国のコミュニティFMを紹介してくれているサイトがあって、どんな放送局で、どんな感じの放送をしているのか知るのに参考になるのですが、残念ながら記事で紹介されている番組の制作費が幾らなのかなど経営の詳細までは知ることができません。

・コミュニティFM大図鑑
 http://blog.livedoor.jp/thp_cfm/

 そのサイトのツイッターアカウントが数カ月前に新潟県上越市のコミュニティFM「エフエム上越」に関する記事をツイートしていて、その記事に「市議会に示されたエフエム上越の決算書や事業計画などの資料」として「出資法人等経営状況報告書(エフエム上越)」が載っていました。pdfファイルへのリンクです。

・上越市がエフエム上越の民間譲渡検討 「単独では経営困難」|上越タウンジャーナル
 https://www.joetsutj.com/articles/41310085
・出資法人等経営状況報告書(エフエム上越)(PDF、1.2MB)
 https://www.joetsutj.com/storage/4,cc8f987d9201

 そこには資本金や役員数、職員数の他に売上高の内訳、財務状況などが載っていて、決算報告書のコピーも載っていました。貸借対照表や損益計算書の正しい読み方は分からないのですが、何となく状況が分かりました。どうやら第22期(平成31年4月1日~令和2年3月31日)は次のような感じらしいです。
  • 売上高 4102万9千円(41.029,040円)
  • 売上原価 685万7千円(6,857,356円)
  • 売上総利益(売上高-売上原価)3417万2千円(34.171,684円)
  • 販売費及び一般管理費 3383万9千円(33,838,880円)
  • 営業利益(売上総利益-販売費及び一般管理費)33万3千円(332,804円)
  • 営業外収益 52万4千円(524,239円)
  • 営業外費用 9万7千円(96,742円)
  • 経常利益(営業利益+営業外収益-営業外費用)76万0千円(760,301円)
  • 特別利益、特別損失 なし
  • 税引前当期純利益(経常利益+特別利益-特別損失)76万0千円(760,301円)
  • 法人税等 18万0千円(180,125円)
  • 当期純利益(税引前当期純利益-法人税等)58万0千円(580,176円)
  • 資産 2605万5千円(26,054,691円)
  • 負債 740万7千円(7,406,763円)
  • 純資産(資産-負債)1864万8千円(18,647,928円)
  • 資本金 5000万0千円(50,000,000円)
  • 利益剰余金(純資産-資本金)△3135万2千円(-31,352,072円)

 売上高4102万9千円の内訳は次の通りです。
  • 広告料収入 1511万0千円
  • 受託事業収入 1840万3千円
  • イベント収入 601万3千円
  • 番組表広告収入 94万0千円
  • そのほかの収入 56万3千円

 広告契約数が114件らしく、広告料収入を契約数で割ったら一件当たり13万3千円。
 受託事業収入は1840万3千円だけど、上越市からの放送委託料は1955万6千円、防災ラジオ起動試験委託料が50万1千円で、数値が合わない理由は分かりませんでした。上越市からの放送委託料1955万6千円は売上高4102万9千円の47.7%で、上越市からの放送委託料が無ければ経営が成り立たない点が問題になっているらしいです。利益剰余金というのはよく分かりませんが、株主から5千万円の金を集めているのに現在の純資産が1864万8千円しかなくて、株主が大損しているということでしょうか。上越市の持ち株比率が51%だから上越市も大損していることになります。利益を増やして利益剰余金をプラスにしてくれないと困る状況でしょうか。

 それはともかく、支出で最も多いのは販売費及び一般管理費の3383万9千円で売上高の82.5%です。この内訳も販売費及び一般管理費明細書に載っていました。
  • 給料手当 21,472,056円
  • 法定福利費 3,353,513円
  • 福利厚生費 406,465円
  • 旅費交通費 21,889円
  • 運賃 4,860円
  • 車両関連費 329,217円
  • 通信費 889,554円
  • 接待交際費 136,720円
  • 広告宣伝費 1,713,273円
  • 事務用品費 247,531円
  • 消耗品費 6,306円
  • 賃貸料 691,695円
  • 支払保険料 39,260円
  • 水道光熱費 207,725円
  • 支払手数料 1,512,104円
  • 諸会費 326,800円
  • 会議費 52,352円
  • 租税公課 58,150円
  • 減価償却費 1,696,019円
  • 行政財産使用料 614,171円
  • 雑費 59,220円

 やはり給料手当の額が大きいです。職員数は正社員5人、その他1人の計6人ですから、2147万円になるのは仕方ないでしょう。役員が5人で、その内少なくとも4人は職員ではないので、彼らへの手当てが幾らなのかは分かりませんでした。
 もう一つ気になったのは、職員以外の人件費です。職員がパーソナリティになっていて、職員以外のパーソナリティはいないのでしょうか。職員以外にパーソナリティがいたとしたら、彼らのギャラはどうなっているのでしょうか。番組表を見ると、生放送中に自社制作番組があるようで、その他はUSENの「元気はつらつ歌謡曲」やミュージックバードの番組が並んでいるようです。他にも他局の番組が放送されているようですが、ミュージックバードに関しては損益計算書に「ミュージックバード売上」という項目があって、その67,200円が売上高40,961,840円から引かれて上記の実質的な売上高41.029,040円になっているようです。これは67,200円を支払えばミュージックバードの番組を放送できるということでしょうか。それならば安いです。信じられませんが、その通りなら、いちはらFMも契約した方が良いでしょう。では、「元気はつらつ歌謡曲」や他の他局の番組を放送させてもらうのに幾らを支払えば良いのでしょうか。それは分かりませんでした。
 他にも気になることがありました。
 売上高の内訳に「イベント収入」601万3千円があるのですが、このイベントの経費は幾らで、イベントによる利益は幾らだったのでしょうか。利益が無ければ「イベント収入」が600万円あっても経営にプラスにはなりません。コロナ禍で売上高が予定よりも減ってしまったことが言及されていましたが、売上高ではなく利益がどの程度減ったかが気になります。

 エフエム上越の決算報告書などを見ることができて、なかなか知ることができなかったコミュニティFMの経営の詳細の一例を知ることができました。職員以外のパーソナリティへのギャラや他局の番組を放送させていただくための費用などもっと知りたいことはありますが、勉強になりました。
 さて、いちはらFMはどうなっているのでしょう。ますます経営の詳細が知りたくなりました。