新庄コミュニティーFM(仮称)「あすラジ」が開局するらしい

 山形県新庄市にコミュニティFMが開局するそうです。現在、総務省に放送免許申請中だそうです。

・新庄コミュニティFM
 https://fm-shinjo.com/
 スクリーンショット(2021/1/11)

 開局前のホームページ(市民株主募集のごあんない)には次のように書いてあります。

いま、新型コロナウイルス禍や豪雨災害などもあり、全国の地方都市が、さらに元気をなくしています。
新庄市も例外ではありません。
実は、地方が元気を失うひとつの理由が、コミュニケーションの不成立です。
おいしいお店、専門的な知識を持つお店や、すぐれたノウハウを持つ事業者、面白いイベントがあっても、そのことが伝わっていなければ、ないのと同じです。
まちには、さまざまな分野で頑張っているひとがいます。
そのことが伝わって、まちのひとが利用し、参加して、まちは元気になります。
このコミュニケーションの成立をお手伝いするのが、 新庄コミュニティFM(仮称)です。
コミュニティ放送は、地域限定の放送局
コミュニティ放送は、放送エリアを限定しています。
開局する新庄コミュニティFM(仮称)は、新庄市とその周辺市町村の情報を中心に放送する 「新しいメディア」です。
たとえば・・・
「季節の生菓子、本日から販売です。 新作の菓子も同時発売します」
「市民プラザで、○○展を開催しています。是非おいでください」
「うちのイヌがいなくなりました。特徴は○○です。見かけた方は連絡をください」
「人手が足りなくて、明日の○時から○時まで○○の仕事手伝ってください」
「○○付近で、交通事故が発生し、現在通行止めです。○○方面に迂回してください」
「○○川がまもなく危険水位に達します。○○地区の皆さんは、○○へ避難してください」
「学校帰りの児童が不審者に声をかけられました。地域全体で一層の見守りをお願いします」
などなど新庄市及びその周辺の情報や、 医療・福祉、法律、子育てなどの様々な情報を、毎日「生」で放送します。

 2020年12月10日の朝日新聞の記事にも次のように書いてあります。

 あすラジは新庄市内の約8割をカバーし、午前7時から午後8時まで放送予定。ニュースなど中央の番組を使う放送局もある中、あすラジが流すのはすべて新庄市内やその周辺のきめ細かい情報だ。商店の新製品や写真展など地域の話題から、交通事故による迂回(うかい)路、迷子になったペット情報、子どもに声かけする不審者事案などの生活情報まで。市議の経験を生かし、小関さんが市議会などの審議内容をわかりやすく伝えることも予定している。
「新庄にコミュニティFM開局へ、来年申請 最上地方で初」朝日新聞、熊谷功二、2020年12月10日 9時00分
 小関さんは「地方が元気を失う理由の一つがコミュニケーションの不成立。コミュニティFMで街の良い話や良いことをしている人を採り上げ、市民の話題になれば、街も明るく元気になるのではないか」と話している。
「新庄にコミュニティFM開局へ、来年申請 最上地方で初」朝日新聞、熊谷功二、2020年12月10日 9時00分

 これを読んだ直後は素直に「期待したい」と思いました。私がイメージしている理想のコミュニティFMの姿に近かったからです。

 でも、理想を語っていても理想通りの放送ができるとは限りません。語った通りの放送を本当に目指しているかどうかも他人には分かりません。今の私は昔の様には信用できなくなっています。例えばネットで検索して見つけたいちはらFMの御園生賢司社長へのインタビュー記事を見た時、自分が聴いていたいちはらFMの放送とのギャップに首を傾げました。

・コンテンツ力にプライドを。地域の「もしも」を考えたラジオ局 | Apps Journal
 https://ajosl.com/ichiharafm/

 2019年の令和元年房総半島台風直後にNHKのニュースやTBSラジオの番組でいちはらFMの臨時スタジオが紹介された時もそうでしたが、取材する側は取材先のことを悪く言わないし書かないのでしょう。ましてや当事者にしか分からないことを当事者として体験しているわけでもないでしょう。ですから良い話は信用しにくいのです。

 新庄コミュニティーFMはどうでしょう。朝日新聞の記事に次のように書いてあります。

 11月初め、新庄市内に運営会社「新庄コミュニティ放送」が設立された。元市議の小関淳さん(64)が「地域の情報を知りたい、伝えたいと思っている人がいる。そのツールとして必要だ」と立ち上げ、代表取締役に就任した。
「新庄にコミュニティFM開局へ、来年申請 最上地方で初」朝日新聞、熊谷功二、2020年12月10日 9時00分

 代表取締役の小関淳さんは新庄市の元市議のようです。インターネットで調べてみました。

・平成19年4月22日執行 新庄市議会議員選挙結果 - 新庄市
 http://www.city.shinjo.yamagata.jp/s020/020/20150227155249.html
・平成23年4月24日執行 新庄市議会議員選挙結果 - 新庄市
 http://www.city.shinjo.yamagata.jp/s020/020/20150227142122.html
・平成27年4月26日執行 新庄市議会議員選挙結果 - 新庄市
 http://www.city.shinjo.yamagata.jp/s020/020/20150512161141.html
・平成31年4月21日執行 新庄市議会議員選挙結果 - 新庄市
 http://www.city.shinjo.yamagata.jp/s020/020/20200128114903.html

 平成19年の選挙では2,470票でトップ当選。平成23年は1,092票で10位、平成27年は834票で10位、平成31年は853票で9位で当選しています。次回の選挙は2023年(令和5年)です。「元市議」ということは議員辞職したということです。気になったので確認しました。どうやら令和元年9月8日の新庄市長選挙に立候補したようです。

・令和元年9月8日執行 新庄市長選挙結果 - 新庄市
 http://www.city.shinjo.yamagata.jp/s020/020/20200130092142.html

 当選した現職の山尾順紀市長が9,187票なのに対して、落選した小関淳元市議は9,132票で僅差です。この時の市長選の争点は新庄市立看護専門学校開設準備事業の賛否だったようです。反対していた市民の声を集めての得票だったのでしょう。その看護専門学校は令和4年4月の開校を目指していたようですが、市長選挙の結果も影響して最終的には関係機関の協力が得られずに断念したようです。

・広報しんじょう 令和元年11月11日号 デジタルブック 13ページ
 http://www.city.shinjo.yamagata.jp/100/010/20190206091059.html
 http://www.city.shinjo.yamagata.jp/book/koho/20191111/html5.html#page=13

 また、別の情報もありました。

・日経デジタルコア: 第25回 地域に花を咲かせよう、輝きの連鎖を繋げよう~山形県新庄市のミニFM局、FM FLOWERの挑戦~
 http://digitalcore.info/26fmfm_flower.html

 2006年9月29日の記事のようです。新庄市にはミニFM局「FM FLOWER」があったようです。そして、小関淳さんは、そのミニFM局開設の中心人物だったようです。

 郊外に続々と進出してくる大型ショッピングセンター、空洞化が進む商店街、加速する高齢化、活気を欠いてゆく街。「このままでは街が終わってしまう。地域に花を、輝きの連鎖を。」商店街の一角に書店を構える小関淳さん(50)が街の活性化を願って一粒の種を置いた。それが世代を超えて遊べるおもちゃ、「ラジオ」のアイデアだ。
 ミニFM放送局FM FLOWER(周波数80.5MHz)は、2002年9月、「新庄市内でFM局でもやろうか?」というインターネットの掲示板を通じた呼びかけを発端に、5人ほどの有志が集まったのがきっかけだった。その後の呼びかけで、試験放送(同年10月)を行う頃には、世代や職種を超えて20名弱のスタッフが集まった。そして、2003年1月6日、街の中心商店街・北本町の一角にミニFM放送局が開局した。翌2月には商店街の空き店舗にスタジオを開設した。「この街をもっと楽しく」をキーワードに、約30名のスタッフがFM局の運営を軸として多彩な活動を続けてきた。スタッフの年齢層は10代から60代まで、職種も会社員、主婦、学生、自営業者、公務員と幅広い。

 「FM FLOWER」については別の記事もあります。2003年9月12日にはインターネットを使って動画配信「Webフラワー」をスタートしたようですし。2005年2月20日には「Web Radio FLOWER」の放送も始めたようです。

・eポートフォリオ入門 eコミュニティ訪問/山形県新庄市 FM FLOWER
 https://www.mmdb.net/emedia/eport80/page2/eport-E210.html
・商店街に元気を届ける手作りFM放送|内閣府 経済社会総合研究所「FMフラワー」
 http://www.esri.go.jp/jp/prj/mytown/genki/report/g001-0311-01.html
・WebRadioFLOWER (ウェブラジオフラワー)
 http://blog.livedoor.jp/web_radio_flower/archives/2005-02.html

 ミニFM局「FM FLOWER」を開設した小関淳さんがどうして「FM FLOWER」から離れて市議になったのか、「FM FLOWER」が日経デジタルコアの記事の後にどうなったのか、WebRadioFLOWERが2013年3月5日のブログ更新後にどうなったのか分かりません。ただ、日経デジタルコアの記事から熱意は伝わってきます。
 そして、記事にはコミュニティFMを検討したことも書いてあります。

 FM FLOWERを予想外のピンチが襲った。2004年の冬から2005年初頭にかけて、「出力が高い」と総合通信局から2度にわたる警告を受けた。
(中略)
コミュニティFM化、Webでの音楽放送など、他の代替案も検討された。しかし、コミュニティFMを実施するには多額の資金が必要になり、Webで音楽放送を行うには著作権処理に対応しなければならない。そこで無理なくはじめられるインターネットを使った動画配信を行うことにした。
 「補助金はもらえれば嬉しいけれど、補助金をもらうことが目的になってしまうと本末転倒。自分達の稼いだお金で自分達の活動を支えたい。身の丈にあった活動を地道に行うのが長続きさせるコツ」と田中さん。当初ミニFMかコミュニティFMかの選択肢があった。初期投資額を比べ、持ち寄りでできる投資額のミニFMを選んだ。今の組織形態は発起人会。当初NPO法人化を目指すという案もあったのだが、今はそれに固執していないという。「NPO法人になることが目的ではない。NPOになることが活動にとってメリットをもたらすならやるけれど、NPO法人化自体が目的になることはない」という。

 コミュニティFMではなくミニFMを選んだ小関淳さんが今度はコミュニティFMを選んだようです。ミニFM局「FM FLOWER」の二代目会長(初代は小関淳さん?)は「身の丈にあった活動を地道に行うのが長続きさせるコツ」と仰ってました。これから開局するコミュニティFM「あすラジ」ではどうでしょう。まずは市民株主が集まるか。朝日新聞の記事によると1株5万円だそうです。既に必要な資金は集まったのでしょうか。株主になった人たちが満足できる放送になることを祈ってます。
 そして、新庄コミュニティーFM(仮称)「あすラジ」が朝日新聞の記事やホームページ(市民株主募集のごあんない)に書いてある通りの放送をして成功すれば、私のイメージする理想像が間違っていなかったと思えそうです。

 最後に経営のことについて書いておきます。
 新庄コミュニティーFMのホームページには次のように書いてあります。

コミュティ放送局は、全国に320局以上が開局していますが、実は、多くの放送局が運営に苦労しています。
そこで新庄コミュニティFM(仮称)は、開局以来18年間黒字経営を続けている放送局と連携し、そのノウハウを導入して安定経営を行います。

 「開局以来18年間黒字経営を続けている放送局」とは山口県宇部市の「FMきらら」のことでしょう。

・FMきらら(山口県宇部市)/コミュニティFM・80.4MHz
 https://www.kirara804.com/
・FMきらら-山口県宇部市 : コミュニティFM大図鑑
 http://blog.livedoor.jp/thp_cfm/archives/51817412.html

 コミュニティFM大図鑑の記事には次のように書いてあります。

 低価格の広告料や、すべてを自社製作・生放送(後述)するなどの、井上氏のCI戦略に基づいた独特のビジネスモデル、いわゆる「きらら方式」で開局1年目から単年度黒字を計上して、以降毎年黒字経営を続けています。このノウハウを基に、他地域でのコミュニティFM開局支援も行っており、中国・四国・関東を中心に26局(2020年10月現在)の支援実績があるほか、数冊の著書も出版しています。
 FMきららは開局当初から、先述のようにコミュニティFMの事業規模に合わせたビジネスモデルを展開していて、黒字計上を続けています。例を挙げると、低価格の広告料(20秒のスポットCMは税抜500円から)、外部の配信は受けずすべて自社製作してかつ生放送する、スタッフは地元から採用するが、ボランティアスタッフは採らない、個人や事業者向けの会員制度を設ける、などを実施しています。他のコミュニティFMで類似のことを行っている局は、概ねここの開局支援を受けています。

 「きらら方式」の詳細は確認していません。でも、黒字経営が可能ならば、いちはらFMも真似してほしいと思う今日この頃です。