メジャーデビューしてない地元のミュージシャンの曲をラジオで流す時の使用料は?

 2016年の夏頃だったと思います。コミュニティFMで地元のミュージシャンの曲を積極的に流して応援したら良いんじゃないかと思いました。そのような放送局があることを知ったのはずっと後です。

 ラジオで流す曲はほとんどがJASRAC管理楽曲で「包括許諾・包括徴収」という仕組みで曲の使用数にかかわらず放送事業収入に応じて使用料をJASRACに支払っているようですが、JASRAC管理楽曲でなくて、他社の管理楽曲でもない曲の場合、使用料はどうするのでしょう。
 実はラジオで音楽を流す場合、JASRAC管理楽曲でも日本レコード協会が絡んでくるらしくて、ちょっと複雑らしいですが、まずは私が思いついたアイデアを書きたいと思います。

 地元のミュージシャンが曲を作ってコミュニティFMがラジオで流す場合、一曲一回につき10円を著作権者であるミュージシャンに支払ったらどうかと思いました。昔のジュークボックスのような仕組みです。一日一回10円で一年毎日流せば一年で3650円ですが、10円という金額が妥当かどうか分かりません。放送局とミュージシャンの契約で決まることになるでしょう。

 ただ、そのような契約が法律上可能かどうか確認している時に気になる情報を見つけました。

・Q&A 著作権Q&A | IRMA - NPOインディペンデント・レコード協会
 https://www.npo-irma.jp/qa.html

 このサイトのQ6を引用します。

Q6: 自分の制作したインディーズCDの曲がラジオで放送されました。私に「二次使用料請求権」があるならば、私はどうすればこのお金がもらえるの?
A6: あなたには、「二次使用料」をもらう権利があります。でもだからといって、ラジオ局に直接おしかけても、もちろんお金はもらえません。現在は、ラジオ局などの放送局は、(社)日本レコード協会に一括して「二次使用料」を払うことに、著作権法で定められています。さらに(社)日本レコード協会は、(社)日本レコード協会に加盟しているレコード会社や団体に、放送局から受け取った「二次使用料」を分ける仕組みになっています。
今までは、(社)日本レコード協会から「二次使用料」の分配を受けるか、あるいは(社)日本レコード協会に加盟している会社か団体に分配された「二次使用料」をさらに分配してもらう以外に、この「二次使用料」をもらうためのシステムがありませんでした。そこで当協会は、(社)日本レコード協会に加盟していないレコード製作者でも、この「二次使用料」が受け取れるように、(社)日本レコード協会と交渉し、ついに、インディーズCDの製作者へのお金の流れを作りました。 この流れを示したフローチャートを作ってみました。当協会に「二次使用料」を受領する権利を委任すると、当協会があなたにかわって(社)日本レコード協会に請求し、10%の手数料を除いてあなたに渡すことができます。委任をご希望の方は事務局までお電話(03-3490-2224)をお願いします。

 「現在は、ラジオ局などの放送局は、(社)日本レコード協会に一括して「二次使用料」を払うことに、著作権法で定められています」と書いてあります。これが本当なら、ラジオ局はミュージシャンと直接契約することができません。
 著作権法を確認してみました。

・著作権法 | e-Gov法令検索
 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000048

 (商業用レコードの二次使用)第九十五条に次のように書いてあります。このことでしょうか。

(商業用レコードの二次使用)
第九十五条 放送事業者及び有線放送事業者(以下この条及び第九十七条第一項において「放送事業者等」という。)は、第九十一条第一項に規定する権利を有する者の許諾を得て実演が録音されている商業用レコード(送信可能化されたレコードを含む。第九十七条第一項及び第三項において同じ。)を用いた放送又は有線放送を行つた場合(営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けずに、当該放送を受信して同時に有線放送を行つた場合を除く。)には、当該実演(第七条第一号から第六号までに掲げる実演で著作隣接権の存続期間内のものに限る。次項から第四項までにおいて同じ。)に係る実演家に二次使用料を支払わなければならない
2 前項の規定は、実演家等保護条約の締約国については、当該締約国であつて、実演家等保護条約第十六条1(a)(i)の規定に基づき実演家等保護条約第十二条の規定を適用しないこととしている国以外の国の国民をレコード製作者とするレコードに固定されている実演に係る実演家について適用する。
3 第八条第一号に掲げるレコードについて実演家等保護条約の締約国により与えられる実演家等保護条約第十二条の規定による保護の期間が第一項の規定により実演家が保護を受ける期間より短いときは、当該締約国の国民をレコード製作者とするレコードに固定されている実演に係る実演家が同項の規定により保護を受ける期間は、第八条第一号に掲げるレコードについて当該締約国により与えられる実演家等保護条約第十二条の規定による保護の期間による。
4 第一項の規定は、実演・レコード条約の締約国(実演家等保護条約の締約国を除く。)であつて、実演・レコード条約第十五条(3)の規定により留保を付している国の国民をレコード製作者とするレコードに固定されている実演に係る実演家については、当該留保の範囲に制限して適用する。
5 第一項の二次使用料を受ける権利は、国内において実演を業とする者の相当数を構成員とする団体(その連合体を含む。)でその同意を得て文化庁長官が指定するものがあるときは、当該団体によつてのみ行使することができる

 ミュージシャンが自分の曲でCDを作って放送局に渡して放送局が流した場合、ミュージシャンは文化庁長官が指定する団体=日本レコード協会を経由しないと放送局から二次使用料を受け取れない仕組みのように読めます。ミュージシャンと放送局が直接契約することが許されていないように読めます。
 ただ、この条文は「商業用レコード」に関するもので、「商業用レコード」については著作権法の第二条1項五号と七号で定義されているようです。

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
五 レコード 蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう。
七 商業用レコード 市販の目的をもつて製作されるレコードの複製物をいう。

 ですから、物に音を固定したものでなければ「レコード」ではなく、レコードでなければ「商業用レコード」でもありません。そこで、音楽配信データは「商業用レコード」に含まれないと解釈されているようです。USBメモリーやSDカードなどにデータを入れて放送局に渡したらダメでしょうが、ネットからダウンロードしてもらえば「商業用レコード」にならず、ミュージシャンと放送局が直接契約できるのかもしれません。

 さて、最近では商業用レコードを使わずに、定額制で様々な楽曲が聴き放題のサービスが流行っていますし、今後の主流かもしれません。また「著作権フリー」の楽曲もあるようです。


 この祝井ゆかさんの「Color palette」という楽曲は3300円を支払って購入すれば、追加料金なしに使い放題できるようです。

・女性目線の結婚式用のバンド曲 著作権フリーの歌詞付き・音楽素材 [mp3/WAV] | Audiostock(オーディオストック)
 https://audiostock.jp/audio/790393

 ジュークボックスのような一曲一回の料金を決めて流した回数分の料金を貰う方式も良いですが、手間のかからない「著作権フリー」という手法で放送局に売る方法もありかもしれません。どちらの方が収入が増えるか、流す回数しだいですが毎年何回も何年も流し続けるようならばジュークボックス形式の方が良いかもしれません。