面白ければ良いわけじゃない

 番組が終了したわけではないのに聴かなくなったラジオ番組があります。パーソナリティが落語家だからでしょうか、話が上手で引き込まれる番組でした。特に歴史コーナーは勉強になって面白くて好きでした。でも今では聴いていません。彼の言葉の選び方が好きになれなかったのです。飲み屋で友人に話すくらいならば仕方ないと思ったでしょう。でも多くの人が聴いているかもしれないラジオでは認めたくありませんでした。本人も「大手の放送局なら炎上する」という趣旨のことを仰っていたので自覚しているのでしょう。

 先日、パーソナリティが本音でしゃべれるラジオなのに最近は世間の目が厳しくなって許されなくなったという趣旨の意見を聞きました。そうかもしれません。昔なら許されていた言動が許されなくなってきていると思います。それはラジオに限りません。昔なら皆で笑えていたことが笑えなくなっているかもしれません。でも、その時の「皆」って本当に皆なのでしょうか。本当は笑えないのに周りに合わせて笑っていた人もいたかもしれません。今の時代は、そんな小数派の思いが知られるようになって、共感する人が増えて自分たちの思いを発信するようになっているのかもしれません。だから昔なら笑えた話も今の時代では「笑ってはいけない」話になっているのではないでしょうか。そのことに気付いていないから責められるのでしょう。いまだに気付いていない人達に気付いてほしいから責められるのでしょう。
 ちなみに、先日は次のような炎上があったようです。何が問題だったか解説している記事がありました。

・岡村隆史「お金を稼がないと苦しい女性が風俗にくることは楽しみ」異常な発言で撤回すべき【追記あり】(藤田孝典)
 https://news.yahoo.co.jp/byline/fujitatakanori/20200426-00175351/

 私はその放送を聴いていませんでしたが、なるほど貧しくて風俗店で働かざるを得ない女性の気持ちに寄り添っていた人にとっては許せない発言でしょう。逆に、彼を擁護する人はそんな女性たちに寄り添う気持ちが欠けているのかもしれません。どちらの方が彼女たちの気持ちに寄り添っているのか、どちらの方が彼女たちの気持ちを理解しているのか、私には判断できませんが。
 それはともかく、公の場で話す内容や言葉選びには気をつけてほしいものです。それでラジオが面白くなくなるとしたら、それはパーソナリティの実力不足でしょう。ちなみに、私が嫌なのは、差別、偏見、セクハラ、パワハラ、いじめ、虐待、DVになっていたり、それらを肯定するような言動です。弱者を馬鹿にしたり弱者に冷たい言動です。強者に媚びたり虎の威を借る狐のような言動です。今はそのくらいしか思いつきませんが、社会問題になっていることを理解していない言動があると嫌になります。

 冒頭で書いた聴かなくなった番組についてですが、問題だと思う発言があっただけなら嫌にならなかったかもしれません。私が問題だと思ったのは、それを諌める人が全くいなかったことです。皆がパーソナリティに媚びているような状態で、番組内では批判しません。批判したら番組の雰囲気が悪くなるから批判できないのかもしれません。番組終了後でも批判して次回から改まっていれば聴き続けたかもしれません。でも、変わる気配はありませんでした。スポンサーも批判しなかったのでしょう。そして、面白い話ならば他で聴けるし、知らなかった情報もネットで調べれば知ることができるのだからと、無理して聴くのをやめました。